人生謳歌。桜花の如くに。
万年成就の象徴、
「桜御影・万成石」に祈りを託す。
私たちは、
なぜこんなに桜の花に
惹かれるのでしょうか。
子供の頃から、大きな出会いや別れ、
そのシーンには必ず
桜の花の演出がありました。
何かを始める時の高揚感や緊張感、
何かを終えた時の充実感や寂寞感。
気づかぬうちに、空に浮かぶ桜の花を仰ぎ、
その当時の溢れ出る感情に
浸っていたのかもしれません。
その石は、万成石といいます。
産地は岡山、
天保年間から採石されている銘石です。
桜の花を彷彿とさせる、
淡紅色をしていることから、
「桜御影」という愛称で呼ばれています。
艶がよく出る上に、
堅固で吸水率の低い石材。
銀座和光や新宿伊勢丹、
明治神宮や瀬戸大橋記念館などの建築物、
石彫、石碑や灯籠、公園の造形など、
この国で幅広く使われてきました。
著名人や歴代首相の墓石としても、
よく採用されてきた万成石。
その道を極めた人の
鋭い審美眼を納得させる何かが、
この石に宿っているのかもしれません。
人生を謳歌した人が、
最後に自らの表現をしていく時、
やはりこの銘石、
「桜御影・万成石」に祈りを託して、
世を去っていこうと考える。
人生の節目・節目に、
常に傍で寄り添ってくれていた
桜の花に想いを語ってきたごとくに。
その盛大に咲き誇る華やかさで、
長い冬を乗り越えてきた私たちの心を、
一瞬にして前を向く推進力に切り替え、
それを確認して、安心したように
パッと散ってゆく桜花(おうか)。
「サクラサク」も、「サクラチル」も、
真の意味は同じ。
次から次へと体験していく人生の局面、
その貴重な一瞬・一瞬を、
我が子を見守る親のように、
私たちとともに喜び、
私たちとともに悲しむ。
それが、桜花の祈りの姿なのでは
ないでしょうか。
多くの喜びや悲しみ、
丁寧に織り込まれた故人の感情が
凝縮されている墓石・万成石だからこそ、
残された人もまた、そこに祈る時、
こみ上げる優しさや
慈しむ心を取り戻していく。
ここ牛久浄苑でも、毎日のように、
そのような情景が見られます。
故人、そして万成石の墓石を見守るのは、
大仏さまと、
420本の規模で彩られた桜並木。
桜花の壮麗、儚さを愛でながら、
次の世の生も謳歌する。
そんな故人の温かな時間が、
いつまでも続いていく。
それが、「万年成就する石」と
縁起の良さを喜ばれてきた、
銘石・万成石の真骨頂なのかもしれません。